2003年3月4日〜6日の3日間の日程で、 アジア・オープンソースソフトウエア・シンポジウム2003が、 ASEAN+日中韓台のコミュニティ・企業・政府研究機関等から約100名を集め、 タイ・プーケットで開催された。 各国のオープンソースソフトウエア活動の現状認識を共有すると共に、 今後のオープンソースソフトウェアへの取り組みについて活発な議論が交された。 最後に、各国のオープンソースソフトウェア関係者の共通認識をまとめた プーケット共同声明が採択された。 会議後に、アジア各国の協力の一環として、Webサイト Asia Open Source Portal が立ち上がり、本シンポジウムの プログラムや 講演資料が公開された。
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《目次》
[補足説明] 日本経済新聞(3/7朝刊)に「アジア版リナックスを共同開発」と題して本シンポジウムが報道された。 しかし、実際には、 Linuxだけでなくオープンソースソフトウェア(OSS)全体をアジアで普及・促進するために、 各国OSS関係者が情報共有し協調しようということが決まっただけである。 今後この連携が進展するとしても、 OSSコミュニティの促進、OSS技術者の人材開発、OSS採用先進事例、 OSS推進政策といった事項に関する情報共有が先決である。 ただし、Linuxを含む各種OSSの各国語版とオリジナル版を統合し、 相互運用性のある多言語版を開発すべきという共通の想いは確かに存在する。 相互運用性なくしては分裂するばかりで、 既存OSSの機能・性能向上や新たなOSSをアジアから発信するのは難しいからである。 しかし、それは次のステップであろう。
2003年3月4日〜3月6日の3日間の日程で、アジア・オープンソースソフトウエア・シンポジウム2003がタイ・プーケットで開催された。 主催は日本のCICC(財団法人国際情報化協力センター) とタイのNECTEC(タイ国立電子情報技術センター)である。 東南アジアと日本・中国・韓国を含む14の国と地域から100名以上の招待者・参加者を集めた。 参加者はオープンソースコミュニティ、企業関係者、政府関係者など多岐にわたった。 各国のオープンソースソフトウエア(以下、OSS)活動の現状認識を共有すると共に、 今後のOSSへの取り組みについて活発な議論が交わされた。
これらの討議の結果として、プーケット共同声明が採択された。 ただし、プーケット共同声明は各国政府代表が承認したものではなく、 各国のOSS関係者の共通認識をまとめたものであることには注意が必要であろう。 プーケット共同声明は、(A)アジアにおけるOSSへの期待、(B)OSSの共有ビジョン、 (C)将来の活動の3パート計9項目から構成される。
(A)アジアにおけるOSSへの期待
(1)アジア各国のOSS活動の現状
(2)アジアにおけるOSSの最近の取組み
(B)OSSの共有ビジョン
(3)OSSコミュニティを促進すべき
(4)OSS技術者の人材開発を促進すべき
(5)OSSの法的事項の正しい理解を広めるべき
(6)各国語版OSSの相互運用性の確保すべき
(7)組込みシステムでOSSを効果的に利用すべき
(C)将来の活動
(8)アジアにおけるOSSでの協働作業
(9)国際組織と地域組織との協調
アジア各国のOSS活動で注目すべきは東アジアのLinuxビジネスの進展と、 東南アジアのOSS推進政策であろう。
中国では政府、公的機関にLinuxサーバの導入が進みつつある。 さらに、政府資金を投じて2002年初頭からWindows98 を目指したデスクトップLinux 環境の 開発プロジェクトYangfan (揚帆) Linux、Qihang (起帆) Linuxが実施されている。 その成果を取り入れたRedflag LinuxはWindows XPと見粉う完成度である。 競争原理を導入した短期的な開発サイクルは日本のOSS開発支援を行う上でも参考にすべきであろう。
韓国・台湾では、組込みLinuxに勢いを感じた。 日本でもSHARPのPDAザウルスやSONYのビデオレコーダCOCOONなど採用例が増えているが、 韓国・台湾も組込みLinux製品の開発が進みLinuxベンダが商業ベースに乗りつつある。 東アジア各国は、 単なるLinux サーバ利用だけでなく、Linux関連ソフトウェアの開発の段階に進んできている。 しかし、OSS自体の開発という意味では、 未だ多くはローカライゼーションの段階に止まっており、アジア発のOSS開発の動きは鈍いと言わざるを得ない。 また、各国それぞれでローカライゼーションを進めると互換性が失われる危険性があり、 真の多言語化にむけた協調の必要性が指摘された。
東南アジアに目を向けると、低価格デスクトップ環境としての期待が高い。 タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムでは、 国立IT研究機関で開発された各国語Linuxディストリビューションが紹介された。 ブラウザ、メーラ、オフィススイート等の基本的ソフトウェアは、 既に実用レベルに達しつつあり、地元ベンダにより販売・サポートも始まっている。 これらの成果を活用し、OSSの利用促進を図るIT政策の策定が注目される。 例えば、タイ政府の情報通信基本計画(日本で言えばe-Japan戦略に相当)では、 OSSの推進が明記されている。 低予算でITインフラを整備すると共に、 国内IT産業を育成するにはOSSが欠かせないことが政府内で認識されている。 また、OSSを利用し、高い不正コピー率(60〜95%)を下げるという目的もある。
今回は初回ということもあり、 各国OSS活動の現状認識と各国のOSSに対する課題およびビジョンの共有までで精一杯であった。 それぞれの国がそれぞれの課題を抱え、 参加者のOSSに対する意図は必ずしも一致したわけではない。 しかし、多様性(diversity)を許容した上でソフトウエア協働作業(collaborative software effort)が行なえることこそがOSSの特質である。 OSSを通じて多様性を尊重しつつ、 各国が協調してOSSの普及・促進を図ることが、 アジア各国の発展に寄与するはずだという点では合意されたと思う。 また、OSSコミュニティの発展とOSS開発者を育てる人材開発こそが、 OSS促進のキーポイントであるということは、 あえて議論するまでもなく参加者全体の共通認識であったと感じた。
また、本シンポジウムで得られた共通認識を深め、 具体的なアクションプランにつなげるために、 メーリングリスト等でさらに情報共有や議論を深め、 近い将来に次回シンポジウムを開催することとなった。