課題
今回のプロジェクトにおいて、Linux PC上でも共同学習システム「スタディノー ト」がWeb掲示板を利用して、十分にIT活用授業の中で使えることが実証できた と考える。しかし、課題もいくつか抽出された。
Web掲示板の機能に関する課題
Web掲示板を利用した共同学習をLinux PC上で行うことが、今回のプロジェクト の主たる目的であった。今回開発したWeb掲示板のエディタ機能はプロトタイプ ではあったが、「ノート(学習のまとめ)」を作るという観点においては、これ まで子ども達が使っていたWindows版と比べても、機能・操作性共に遜色はなく、 十分に使えるものであった。しかし、作成途中データの一次的保存と印刷に関し ては改良が必要である。
また、Web掲示板機能については、Webブラウザがベースとなっていることもあり、 子ども達はすぐに慣れたようであった。導入後すぐに使いこなしており、操作性 は十分であった。
しかし、既存の「スタディノート」の校内サーバとWeb掲示板でデータ連携して 欲しいという要望が強かった。データ連携ができれば、Linux PCかWindows PCか に依存せず、どちらのPCでも同じように使えるからである。また、既存の「スタ ディノート」サーバとWeb掲示板を比較すると、Web掲示板にはユーザ管理機能と データベース機能がないが、これらが実現されればデータ連携せずともWeb掲示 板だけに置き換えられる可能性がある。
したがって、Web掲示板をより使いやすいシステムとするためには、次のような 機能を付け加えてゆく必要がある。
- 作成途中のノートを一時的にサーバに保存する機能
- 複数のページを一枚の紙にまとめるなどの高度な印刷機能
- Windows PCから利用している既存の校内サーバとの連携
- Web掲示板に登録した自分のノートを簡単に探せる機能(ユーザ管理)
- 教員が子ども達のノートを管理する機能(データベース機能)
Linux PCの周辺機器の操作性の課題
今回のプロジェクトで最も問題となったのが、フロッピーディスクの取り扱いで ある。つくば市では、デジタルカメラとして、フロッピーディスクを記録メディ アとするソニー製のマビカが広く普及している。フロッピーディスクに格納され た画像ファイルを、ノートに貼り付ける際に、Linux PCでは画像ファイルの場所 を探しにくいという問題があった。これはLinux PCではフロッピーディスクの 「マウント」(装置をソフトウェア的に接続する操作)という操作を行う必要があ ることと、画像ファイルが存在するディレクトリ(フォルダ)の場所が分かりにく いことが原因である。
最近のデジタルカメラはコンパクトフラッシュやメモリスティック等が記録媒体 として利用されることが多い。これらの記録媒体でもフロッピーディスクと同様 の「マウント」操作が必要であり、画像ファイルの格納場所も子ども達には分か りにくい。
この問題を解決するには、記録メディアが差し込まれたことや交換されたことを、 Linuxが自動的に認識して、分かりやすい場所に表示することが必要である。
また、記録メディア以外の周辺機器、例えば、プリンタやプロジェクタの操作も、 Windows PCに比べると分かりづらいことも、Linux PCの操作性の改良が必要と考 えられる。
Linux PCに対する教員の不安感
教員の中でもITに強い教員は、Linux PCであっても少し使っているうちに慣れて、 授業に必要な操作は覚えてしまう。子ども達もしばらく使っているうちに、 Linux PCの操作に慣れ、多少の不自由があっても使いこなしていた。
しかし、ITにそれほど強くない教員は、Linux PC自体に対する不安感が大きいよ うである。Windows PCをやっと使えるようになったところに、新しいタイプのPC が導入され、新たに覚えることが増えることに対する、心理的負担は無視できる ものではなかった。一部の学校では、最初の数週間は授業に付き添って、操作を サポートする必要があった。
Linux PCの操作性は着実に向上し、子ども達が使えるレベルに達してきてはいる が、新しいものに対する不安感を取り除くことも必要である。Linux PCはまだユー ザが少ないために、気軽に周りの人に聞くということが難しい。
この問題の解決は簡単ではないが、地域に根ざしたLinuxユーザ・コミュニティ の協力を得るなどの方策は考えられるであろう。
教材コンテンツの互換性
インターネット上で提供される各種の「教材コンテンツ」をWebブラウザで閲覧 する場合も、多くの場合特に問題は発生しなかった。
ただし、一部の教材コンテンツについては、表示できないものがあった。これは Webページの中で利用されている動作記述法(=JavaScript)がインターネット・ エクスプローラに強く依存した形式で記述されていることが一つの原因であった。 また、動画像ファイルとして、Windowsでしかサポートされていない形式(例えば、 Windows Media形式)を使っている場合もLinux PCでは利用できなかった。
これらはLinuxの問題というよりも、本来は、教材コンテンツの開発に際しPCの 種類に依存しないようにすべきである問題である。
しかしながら、既に提供されている教材コンテンツについては、修正が難しいた め、Linux PCで利用できるようにするための、コンバータ(変換ソフト)を開発す ることも一つの方法であろう。
子ども向けのソフトウェアの充実
学校教育現場におけるLinux PCの普及を考えると、子ども向けの各種ソフトウェ アの充実が欠かせない。ワープロ、表計算、お絵かき、電子メール、チャット、 テレビ会議など、一般向けのソフトウェアは既に揃ってきているが、子どもが使 えるようなソフトウェアは少ないと言わざるを得ない。
また、Linux PC上のソフトウェアは、元々海外で開発されたものが多いため、画 面の日本語化や日本語マニュアルの整備が十分でないものも多い。これらを子ど も達でも使えるように、やさしい日本語でメニューが表示されるように修正する ことと、簡単な日本語で記述されたマニュアルや入門書を用意することが必要で ある。


