プロジェクトの評価

Linux PC上の共同学習システム「スタディノートWeb掲示板」を、IT活用授業で 利用した後に、教員16名に対してアンケート調査を行った。さらに、アンケート 調査を補足するために、数名の教員に対してヒアリング調査を行った。アンケー ト対象者数は次表のとおりである。またヒアリングは2月14日の定例打合せ時に、 各校から参加している代表者に対して実施した。

並木小学校2名
竹園東小学校1名
二の宮小学校2名
吾妻小学校4名
吾妻中学校7名

アンケートおよびヒアリングによる調査内容は、次のようなものである。

Linux版スタディノートについての機能の充足状況

アンケートではまず、LinuxデスクトップPCで使用するスタディノートについて、 その機能の充足状況を質問した(問1-1)。質問は、ブラウザでノートを見るため の機能、エディタでノートを作るための機能、Web掲示板システム全体としての 機能の3項目である。

回答は4択からの選択とし、a.授業を行なうために十分な機能が用意されていた、 b.一部足りない機能があるが授業はできる、c.機能に支障があり授業ができない、 d.機能が不足しており授業にはまったく使えない、といった4段階の選択肢を用 意した。

アンケートの結果を次に示す。 Linux版スタディノートの機能評価

アンケート回答者のうち半数程度の教員が機能の不足を感じてはいるものの、 Linux版スタディノートを用いて授業を行なうことはできると答えている。とく にブラウザでノートを見ることおよびWeb掲示板として使用することについては、 機能不足で授業に支障があるもしくはまったく使えないといった回答は無く、 Linux版でも問題なく授業を進められることが分かる。

その一方で、エディタでノートを作るための機能については、やや満足できてい ない傾向にある。その理由は、今回作成したエディタは短期間で新規に開発した ため一部の機能に制限があったことや、また今回Linux版エディタを作成するに あたってエディタ自身の機能修正が検討されたために既存のWindows版スタディ ノートと完全互換ではなかったことなどにある。

また校内サーバの利用からWeb掲示板サーバのみへの運用形態の変更があったこ とに関しても、例えばデータの保存など直接の操作の違いがエディタの機能とし て現れたため、インタフェースとして利用されたエディタに不満が集中したもの と考えられる。

なお不足している点で要望の高かった機能として、以下の機能が挙げられた。

Web掲示板だけで運用することを考えると、これらの機能を追加するためには、 個別のユーザ管理機能とデータベース機能が必須である。ユーザ管理があれば自 分のノートを探すこともでき、またデータベース機能があれば子ども達の学習進 捗状況を管理することが可能である。

Linux版スタディノートに関する操作性の評価

次に、LinuxデスクトップPCで使用するスタディノートの操作性(使いやすさ) に ついて質問した(問1-2)。機能に関する設問と同様、操作性についてもブラウザ でノートを見る作業についての操作性、エディタでノートを作る際の操作性、 Web掲示板システム全体としての操作性について意見を求めた。

選択肢も、a.十分使いやすい、b.一応は使えている、c.かなり使いづらい、d.操 作性が悪すぎて子供には使えない、との4段階とした。アンケートの結果は以下 の通りである。 Linux版スタディノートの操作性評価

ブラウザで見ることおよびWeb掲示板の操作性については、機能の充足状況と同 様、ほぼ問題なく使うことができると答えている。とくにブラウザでノートを見 る操作については、十分使いやすいとの回答が2/3ほどであり、既存のWindows版 スタディノートと遜色ないレベルの評価結果である。

Web掲示板の機能は、閲覧する、返事をつける、新規に投稿する、の3機能があ るが、いずれもブラウザベースなので、子ども達には特に操作性に問題はなかっ た。ウェブブラウザはソフトウェアとして成熟しており、ユーザインタフェース においてWindows用ウェブブラウザとほとんど差異がない。したがってユーザは その操作に慣れており、その事実がこの結果に大きく影響していると考えられる。

一方、エディタ機能の操作性については十分使いやすいという意見が得られず、 改善の余地が多く残されていることが示された。個別の意見によれば、ノートを 作成するという観点では、Windows版に比べてもほぼ遜色がない操作性が実現さ れている。しかし、凝ったことを実現しようとすると、いくつかの作業で使い勝 手の悪い操作が残されており、結果としてそれが全体の操作性の悪さの印象を与 えている。

操作性の点で最も不満が高かった項目は、データの保存と読み込みについてであ る。ノート自体およびノートに挿入する画像・動画データなど、データの移動が 発生する操作について、操作性の悪さが複数指摘された。

フロッピーディスク、USBメモリからの画像・動画の貼り付けが難しかった、と いう意見については、スタディノートエディタの制約だけではなく、Linuxデス クトップが抱えている不具合が影響している面もある。この点については実験期 間中に改良を進め、かなり改善された。しかし初期の悪い印象が強く、また、ま だ修正しなければならない点も残されているため、今後の課題のひとつである。

ノートの保存に関しては、作成途中のデータを一時的に保存する際に、フロッピー は使いづらいという問題がある。デスクトップに保存すると、次回PCの番号とファ イル名を覚えておかなくてはならない。これについては校内ファイルサーバがあ れば解決する問題である。校内サーバの導入は要望として強く望まれている処置 であり、今後の運用でカバーすることが望まれる。

Linux PC全体としての機能の充足状況、操作性、実用性(今後の利用可能性)に関する印象

アンケートでは、今回開発したLinux版スタディノートだけでなく、Linux PC全 体としての機能の充足状況(問2-1)、およびLinux PCのデスクトップ端末として の操作性の可否(問2-2)についても質問した。さらに今回の経験を踏まえて、今 後Linux PCを授業で使える範囲がどのくらいあるか(問2-3)についても尋ねた。

機能性と操作性については問1-1、問1-2と同様の選択肢を用意し、今後の利用可 能性に関しては、a.大部分に使える、b.半分位は使えそう、c.ごく一部しか使え ない、d.全く使えない、といった4段階の評価項目を用意した。

アンケート結果を次に示す。 Linux PC全体としての機能評価・操作性評価と今後の利用可能性

Linux PC全体の印象として、全く使えない、子どもには使えない、といった評価 は無く、多少の難点は残るものの学校教育現場においてはほぼ実用に耐え得ると の評価を得た。ただし、使いづらい、一部しか使えない、といった評価も少ない ながら残されている点も無視はできない。

Linux PCの機能性・操作性についても、以下のような改善点が指摘されている。

これらの意見については、もちろん、これまで利用を続けてきているために慣れ ているWindows環境から、新たなIT環境であるLinuxの利用へと移行したことによ る影響も考慮する必要がある。しかし、本実験期間でいくつか挙げられた問題点 の改良は、学校教育現場における今後のLinux PCのデスクトップ端末としての有 効活用に向けた必須の作業である。これらの項目を指針として、今後、オープン ソースソフトウェア改良が加速することを期待したい。

Linux PCに対する児童・生徒の反応

全体を通して、児童・生徒はとくに違和感なく使用している。調べ学習などで Webから情報を取得したり、あるいはWeb掲示板を利用したりといったブラウザベー スの作業ではとくにその傾向が顕著である。アンケートの問3では自由記述回答 欄として子ども達の反応はどうだったかを質問したが、その回答として、自然に 使用している、とくに違和感なく利用している、といった状況が複数報告されて いる。

機能不足、操作性の悪い点については若干、戸惑っていたとの報告もあった。た だし子供の順応性は高く、回数をこなすことで操作に慣れ、最終的にはとくに問 題とはなっていないようである。また慣れの問題として、アイコンの違い、説明 のための言葉の違いが戸惑いを与えるとの指摘もあった。

なおLinux PCに対する児童・生徒の反応はおおむね良好であるが、その理由とし て、無線LANで好きな場所で使えるようになったから、一人一台で使えるように なったから、新しいPCだから、などの影響もあるので注意が必要である。これら の理由は本質的にLinux PC導入と関係ない項目であり、その影響は割り引いて考 えなければならない。またその反面、これらのコメントはWindowsとLinuxの差が 決定的なものではないことを物語る事実ともいえよう。

評価のまとめ

Linux PC上で動作する共同学習システム「スタディノートWeb掲示板」を使用し てIT活用授業を行った教員に対してアンケートとヒアリングを実施し、本プロジェ クトの効果を評価した。全体として、Linux版スタディノートとLinuxデスクトッ プPCそのものに関して、機能性、操作性に大きな支障はなく、授業を遂行するこ とが可能であることを示すことができた。ただしエディタについて、またシステ ムの運用については、若干の改善点が残されている。これらについては今後の改 良を望むところである。

Linux版スタディノートによって、Linux PCでもこれまでと遜色の無い共同学習 授業を実施できることが示された。それにより、Linux PCの導入によるコスト削 減、管理の簡易化、セキュリティの向上、などの一般的にオープンソースソフト ウェアのメリットと言われている利点を学校現場で享受できるといった効果が期 待される。

評価のまとめの最後に、今後の利用可能性に関するアンケート結果について、再 度、触れておきたい。今回導入されたLinux PCについて、今後も授業の大部分の 範囲で有効に活用していきたいという意見が複数得られた。この結果は今回開発 したシステムの有効性だけでなく、Linux PCの潜在能力を示すものであり、オー プンソースソフトウェアの開発者にとっても大きな励みとなる。今回のプロジェ クトの成果が教育現場のニーズとオープンソースソフトウェア開発コミュニティ の橋渡しの一助となれば幸いである。